毎日新聞連載記事 『うつ・50話』
第17回 対人恐怖症と密接関連
あなたは、人前で極度に緊張しますか。人前で失敗したら恥をかくのではないかと、緊張したり、不安になりますか。誰でも経験することなのですが、このような状況を避けようとするあまり、日常生活に支障をきたせば、「対人恐怖症」と言える状態です。
昔から、「赤面恐怖症」や「あがり症」としてよく知られていますが、他に会食恐怖、視線恐怖、電話恐怖、書痙(しょけい、人前で字を書く時に手が震えること)などがあります。最近の欧米では、社会不安障害として注目されています。他人の評価を過度に気遣い、否定されたり、嫌われたり、恥をかかされることを心配します。このような状態が高じ、あらゆることを避けて外出しなくなり、家に引きこもる場合も少なくありません。
「引きこもり」が持続すると、抑うつ気分、意欲の低下、興味の喪失などの症状を生じ、うつ病を発症しやすくなります。一方、うつ病になるとうつ症状のため、他人と会うのが面倒になり、これを避けるため、対人恐怖症の状態になります。このように、対人恐怖症とうつ病は密接に関連しています。うつ病の治療をすれば、対人恐怖症の症状も改善します。併発して、より引きこもるという重い状態の場合でも、薬物療法により、症状はかなり軽減します。
しかし、これだけで十分ではありません。精神療法などにより、考え方の悪い癖を変える必要もあります。少しぐらいみんなの前で失敗しても、「笑いを取る」と考えられるようになれば、心配はないでしょう。
次回は「認知症とうつ」について。

(大阪市立大大学院医学研究科准教授・神経精神医学、永田利彦)
毎日新聞 2007年7月28日 大阪朝刊
本原稿は、当院医師により執筆され毎日新聞に掲載された原稿を、毎日新聞社の許可を得て転載したものです。
挿絵は、毎日新聞に掲載された際、添えられたイラストです。
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