毎日新聞連載記事 『うつ・50話』
第16回 職場の人間関係
職場には趣味や考え方の違う人がいます。また、誰もが仲間であると同時にライバルであるとも言えます。
良い上司や同僚、部下に恵まれれば、程良い緊張の中で、仕事に対する意欲や能率も上がり、向上心にもつながります。しかし、うまくいかない場合、職場はストレスの場となり、不安、緊張、怒り、抑うつ、不眠、食欲低下などを生じます。喫煙や飲酒の量も増え、揚げ句の果てに、うつ状態やうつ病に陥る場合があります。
職場での人間関係を良好に保ち、周囲から好感を持たれることに越したことはありませんが、人間関係の調和を最優先して、自己主張をせず、周囲に合わせ過ぎるタイプの人がいます。
このタイプの人は、職場になくてはならない人なのですが、実はうつ病になりやすいのです。部下に「困ったら相談してくれ」と言うのに、自分が困っても上司に相談するのが苦手。他人に優しく自分に厳しいという性格も、極端になればうつに結びつくのです。
他人に優しく接するのであれば、自分のミスも許してもらえると考える。自分に厳しく仕事をするのであれば、他人にも厳しさを要求する。このように、他人と自分への要求水準を同じにすれば、うつにはなりにくいようです。部下が困っていたら積極的に手助けをするのであれば、自分が困った時にも早めに上司に相談した方が良いでしょう。
次回は「対人恐怖症とうつ」について。

(大阪市立大大学院医学研究科准教授・神経精神医学、井上幸紀)
毎日新聞 2007年7月21日 大阪朝刊
本原稿は、当院医師により執筆され毎日新聞に掲載された原稿を、毎日新聞社の許可を得て転載したものです。
挿絵は、毎日新聞に掲載された際、添えられたイラストです。
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