肝がん(肝細胞癌)

現在日本の肝がんによる死亡者数は年間3万5千人前後で、30年前に比べ3倍に増えています。(図1)肝がんの原因の多くが肝炎ウイルスに感染したことによりますが、その70〜80%がC型肝炎ウイルスの感染によるものです。 主な原因がわかっているため、早期発見と適切な治療で肝がんによる死亡者数を減少させることができます。 肝がんと診断された場合は、がんの大きさ、個数、脈管侵襲などの進行度、存在部位に加えて肝機能の程度を考慮して治療法が選択されます。(図2・3) 肝細胞がんの治療には外科的治療、経皮的治療、経動脈的治療などがあります。
肝がん図1 肝がん写真1

診断

画像診断

慢性肝炎や肝硬変の患者さんは、肝細胞がんの早期発見のために超音波検査を受けていただきます。異常がみられる場合、造影剤を用いたCTやMRIを受けていただきます。
これらによりほぼ診断可能ですが、診断困難な場合や治療方針決定に必要な場合、入院の上、血管造影や針生検を受けていただきます。
肝がん写真2

腫瘍マーカー

肝細胞がんの腫瘍マーカーにはαーフェトプロテイン(AFP)、AFP-L3分画、PIVKA-IIがあります。慢性肝炎や肝硬変の患者さんでは定期的な肝機能検査値と腫瘍マーカーの測定が重要です。

治療

肝細胞がんの治療は肝切除術などの外科的治療、肝動脈塞栓術や肝動脈内抗がん剤注入療法などの経動脈的治療、エタノール注入療法マイクロウェーブ凝固療法やラジオ波熱凝固療法などの経皮的治療が中心に行われ、さらに放射線治療や全身化学療法があります。 最近では、生体肝移植も行われています。 これらの治療法は「科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン」(図3)を参考にし、個々の患者さんの病態や状況に応じて選択されます。
肝がん図2

外科療法

比較的肝機能がよく、限局された肝細胞がんに対して最も有効な治療法です。最近では、多くの症例が無輸血で行われています。さらに、より侵襲の低い方法として、腹腔鏡下肝切除術を導入しています。 また、他の治療法との組み合わせによって、高度進行肝癌に対する治療にも積極的に取り組んでいます。一方、多くの肝細胞がんはC型肝炎ウィルスやB型肝炎ウィルスが原因となって発生しますが、肝切除後にインターフェロンなどの抗ウィルス治療を行うことにより肝細胞がんの治療成績が飛躍的に向上しました。比較的進行度の低い(ミラノ基準:脈管侵襲を伴わない、径3cm3個以内あるいは径5cm1個以内) 肝細胞がんでありながら肝機能が悪いために治療が困難である患者さんに対して、生体肝移植が行われます。

経皮的治療(穿刺療法)

径3cm以下で3個以内の肝細胞がんが適応となります。総ビリルビン3mg/dL以下、血小板数3万以上で、腹水がなければ可能です。 穿刺療法にはエタノール注入療法、マイクロウェーブ凝固療法やラジオ波熱凝固療法がありますが、近年、その治療効果や治療の簡便さからラジオ波熱凝固療法が行われることが多くなりました。肝細胞がんの存在部位などからラジオ波熱凝固療法が困難な場合、エタノール注入療法が行われます。 肝表面にある肝細胞がんに対しては、腹腔鏡を用いてラジオ波熱凝固療法やマイクロウェーブ凝固療法が行われ、その有効性が確かめられています。
肝がん図3
肝がん図4
肝がん写真3

経動脈的治療

経動脈的治療には肝動脈塞栓術や肝動脈内抗がん剤注入療法があります。 肝動脈塞栓術は肝細胞がんを栄養とする肝動脈を詰めることによってがんを壊死させる治療法で、肝内に多発する肝細胞がんが適応となります。 門脈などに拡がった高度に進行した肝細胞がんに対しては、肝動脈内抗がん剤注入療法が行われ、抗がん剤を継続的に注入する場合にはリザーバー動注と呼ばれる方法が用いられます最近、抗がん剤とインターフェロンを組み合わせた治療法が開発され、高度進行肝癌に対する治療成績が向上してきました。

その他の治療

肝内の限局した肝細胞がんのうち、他の治療法が実施困難な場合、門脈内腫瘍栓あるいは骨に転移した肝細胞がんに対しては、放射線治療が行われることがあります。 全身に転移がある場合、経口抗がん剤などによる全身化学療法が行われます。